🌺🎁🎂おはも生誕後日祭IN DA 4.5畳🥂🎉🌺 /こがわ | moonman in da 4.5畳

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🌺🎁🎂おはも生誕後日祭IN DA 4.5畳🥂🎉🌺 /こがわ

さぁさぁさぁ!今年もやって参りましたおはもさん生誕祭!5/14は過ぎただろって…?ノンノン、5/14という概念の1日は確かに過ぎたかもしらん、しかしな、ハミィの生誕を寿ぐ気持ちは365日燃えたぎってんのよ…!というわけで、これからも散発的・突発的にこの祭りは開催される予定なので、油断すんじゃね〜ぞお前ら〜!!!

さてさて、それではこの良き2022年のハミデント・鱧さん生誕祭、真っ先に祝いに駆けつけたのはこいつらだ!!!!!!

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 阿佐ヶ谷の住宅地の中に埋もれるようにしてある、兄のその店は、日を跨ぐより前に消灯されるのが普通だ。それなのに、何故か今日は、まだ店に居る気がしてならなかった。いわゆる、双子の勘、ってやつ。
 あちこちから射す常夜灯の明かりで、淡い影が散らかる路地を、俺は真っ赤な750ccの愛車を押して歩いていた。スカジャンの背中の昇り鱧も、安穏とした灯りにぼやぼやと照らされているのだろうと思うと、笑えてくる。数十分前まで、俺の背中に貼り付いていたのは、目まぐるしいパトランプだった。俺の獰猛な鱧にはもちろん、優しい住宅地を見守る電灯なんかより、危険な警告灯の方が、絶対にお似合いなのに。
 果たして、兄の店は、表の灯りこそ落とされていたが、奥の厨房の方にはまだ人の気配があった。店の敷地の端にバイクを停める。ハーブの花壇に囲まれた前庭の小径を通って、裏手に回り、勝手口をノックした。
「はーい?」兄の間延びした声が応える。夜中なんだからもう少し警戒しろよ、と思うのだが、思うだけで、「俺」と、こちらもぞんざいな、身内らしい口を利いた。
「開いてるよ、」
 外から薄い扉を開けて、厨房に直接入る。兄の亮は、調理台の上にわさわさと並べられた、俺にはあまり違いの分からない葉物野菜やら香草やらをちぎって口に入れてみたり、刻んでみたりしながら、ちらりとこちらを目で確かめた。就業時にはきっちり後ろでひとつに纏められている髪も、今は緩いハーフアップになっている。
「どうしたの、こんな時間に」
 兄としての最低限の義務だと思って質問しています。と言わんばかりの、いかにも身の入っていない声で、亮は訊いてきた。その間にも、何か傍らのメモ用紙に書き込んだり、火に掛かっているフライパンの中身を混ぜたりと、気持ちのほとんどは仕事の方に向かっている。
「いや、そこ通りかかったら、明かりが見えたから、」
 俺は勝手にそこらの椅子を持ってきて、奇麗に磨かれた調理台に頬杖をつく。楽な姿勢をとったら、眠気と、空腹が、同時に湧いてきた。瞼が重くなって、腹が調理の音に紛れる音量で鳴る。
「そう、」亮は気のない相槌だけ返した。
 こんな住宅地のど真ん中、目指して来なければ、通りかかるわけもない。だけど、兄はそこを指摘しなかったし、弟の俺は、突っ込まれないのを知っていた。
「亮こそ、こんな時間まで残ってるの珍しくない、」眠気に粘ついた声で訊くと、亮もつられたように、目をぎゅっとする瞬きをして、「んー」と唸る。
「実は、今週末からコースの料理新しくするんだけど……、うちのパティシエがさぁ、今朝出勤してきて開口一番に、"予定してたのより良いアイデア湧いたから、デザートメニュー変更したい"、なんて無理言ってきてさ……。試食した感じ、まぁ、悪くはなかったんだけど、メインで使ってるソースとの調和が俺的にちょっとズレるから、色々試してたら、……いつの間にかこんな時間になってた」
 あくびを噛み殺しながら、亮は言った。迷惑そうな口調だったが、本当に迷惑だったらそもそも残業なんかしない。そういう奴なのだ。
「へぇ……大変だね、」
「腕は良いんだけど、気紛れすぎるんだよ。急に素材探しの旅に出るとか言って居なくなったりするし……」
 それは亮も同じだろ。まぁ、あの女と結婚してからは、さすがにふらりと料理修業の旅に出るような真似はしなくなったみたいだけど。
 俺は調理台の隅の隅に置かれた、場違いなデパートの紙袋を目の端に見た。中から、美しい模様の包装紙と、盛りに盛られたリボンが覗いている。その向こうに半ば隠れた豪華な花束は、心なしか、元気がなくなってきているようだ。
 眠気に重い瞼を閉じる。亮が食材を刻んだり、鍋だかフライパンだかを動かしている音は、どうしてかいつも円やかに響いて、変に耳に立つことがない。
「────たべる?」
「………………え、……?」
 亮の声が俺に向けられた気がして、ハッと目を開けた。ほんの少し、微睡んでいたみたいだ。調理台の上に、美味そうなハンバーガーが載った皿が差し出されたところだった。
「……あ、ごめん。淳、寝てた?」
「いや、……うん、食う」
 亮は薄く笑って、コンロの方に戻る。
 横から見える限り、ハンバーガーの肉の部分はたぶん、ハーブ入りのソーセージを皮から出して円く成形した、即席のものだ。それにレタスとトマトとチーズ。潰すように両手で持って、かぶりつく。……あ、オリーブも入ってる。
「……うまい」
「そうでしょう」
 背中で亮は言った。放っといたら、一生そのままソースパンを混ぜていそうな、眠たくなる背中だった。

 店を出てから、停めたままの愛車に跨がって、俺は携帯電話を取り出した。5月14日、午前2時。もうとっくに電話帳からは消したが、空で覚えている番号を押す。
『……もしもし、』
 相手は、9回目のコールの後で出た。応答するか迷ったのか、寝ていたのか、どっちだろうと思ったが、電話口に出た声を聞く限り、起きていたようだ。いや、でも、寝付きの悪い女だったからな。分からない。
 そもそも、夜中にこいつに連絡して、まだ起きてるかどうかだなんて、当時は気にしたこともなかった。
 亮なら。
 そもそも、こんな時間に電話をかけたりはしないだろう。よっぽどの……そう、例えば、誕生日とかでもない限り。
 電話口で息を潜めている気配に、俺は、わざと板に息を吹きかけるようにして、笑った。
「そんな警戒すんなよ。……今、亮の店なんだけど、新メニューのソースだか何かで、ドツボにハマっちゃってるみたいでさ。放っといたら朝までやってるよ、あれ。せっかくの花束が萎れそうだったから、一応、連絡、」
 女は、え、とか何とか言っている。何かが軋むような音。やっぱり、ベッドに入っちゃいたんだろう。俺は電話を耳から離して、電源を落とした。そこまでしなくて良かったんだけど、何となくそうしてしまった。
 あの女は、夫を迎えに、わざわざここまでやって来るだろうか。
 それとも、仕事に打ち込んでいるのだからとそっとしておいて、朝になって飛んで帰った夫から、萎れた花束とプレゼントを受け取るのだろうか。
 俺は、今日があの女の何回目のバースデーかということさえ、忘れてしまった。
 本当に忘れてしまったんだということに、このとき、初めて気が付いた。
 来年には、携帯番号も忘れているんだろうか。
 ガソリンタンクを抱くように描かれた、燃える鱧の絵をひと撫でしてから、バイクを降りる。俺は真夜中の住宅街を、愛車とふたり、互いに慈しみ合う恋人同士のように並んで歩いた。

〜FIN〜

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